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製品情報>18bit 精密AD変換ボード>18bit A/D開発日記>開発日記11月

開発日記11月

A/D D/A変換ボードを設計。そのための電源で苦労した。

2013.11.15

さまざまな受託案件でA/D + FPGA + D/A + モータドライバ、みたいなのを作ってきました。特電が長年あたため続けてきた「究極のA/D D/A変換ボード」をついに作ることを決意しました。

ざっくりいうと、性能は、

  • ADCが18bit 2Mサンプル/秒
  • DACが16bit 1Mサンプル/秒

で、ノイズが限界まで小さいこと、です。

Tkdn_adc

 

計測したデータはFPGAボードを通じてメモリに蓄えてUSBから読み出したり、SDカードに書き込んだりできるようにする予定です。

18bitのA/Dの性能を出すため、高価な部品を惜しげもなく投入します。

まず、初段のオペアンプはOPA211AIDRを使います。1.1nV/√Hzと、OPアンプの中でも超低ノイズのランクです。このOPA211AIDRは単なるボルテージフォロアとして使っているので、不要ならばバイパスできるようになっています。

そして、そのあと、完全差動OPアンプで差動信号に変換します。ここでも1.9nV/√Hzクラスの業界最高レベルの低ノイズ品を使います。

完全差動OPアンプは4本の抵抗でゲインを決めますが、この比が崩れるとコモンモードノイズがシングルエンドになって見えるようになってしまいます。そのため、マッチングのとれた集合抵抗を使います。たかが抵抗に1個800円もします。

AD変換器のVREFには専用の高精度リファレンスを使います。これも高い。

そして、A/D変換器とFPGAとの間にはアイソレータを使って電気的に絶縁しています。電源も絶縁型のプラスマイナス電源を作ります。

ここでは、3.3Vまたは5Vから±の絶縁型電源を作るのですが、市販の電源モジュールはいずれもリップルが40mVくらいあります。電源に40mVの変動があってもADCの変換結果には影響を与えないかもしれませんが、あらかじめ削減しておきたいものです。

そこで前から目をつけていたのが、Linear Technology社のLT3439です。

http://www.linear-tech.co.jp/product/LT3439

普通のスイッチング電源は、コイルに流した電流をFETでバチバチとON/OFFするときの逆起電力を使って昇圧したり負の電圧を作ったりします。そのため、リップルも大きいしノイズもまき散らします。

それに対してLT3439は手加減をしながらプッシュプルのコイルに交流を流します。スルーレートコントロール型と書かれていますが、つまり商用AC電源のような電流変化の交流を作ってくれるのでしょう。

 

 

そしてトランスを使って昇圧し、ブリッジダイオードで整流するというわけです。従来のDC/DCと違って、AC/DCインバータのような感じの電源回路になります。

データシートによれば、後ろにLDOを入れなくてもリップルが0.2mVppに抑えられています。

Lt3439_sch

(データシートより引用)

 

 

 

LT3439の欠点は2つあって、出力電圧をコントロールできないことと、トランスの入手が難しいことです。

出力電圧はコイルの巻き数比と入力電圧で決まるので、フィードバックをかけるわけでもなく、完全な無制御です。そのため、後ろにLDOを入れて定電圧を作ります。

それから、LT3439のデータシートにはCOILTRONICS社のCTX02-16030やCOILTRONICS CTX02-16076といったトランスを使った参考回路が示されています。しかし、これは容易に入手できるものではありません。

データシートを読みながら、どういう特性のトランスが必要なのかを計算してみると、3.3V→±5Vの場合は巻き数比が1:2くらいで、5V→±5Vの場合は巻き数比が1:1.6くらいが適当でした。100mA~500mAくらいの電流を取り出したい場合、トランスの一次側のインダクタンスは300uH~800uHくらいが最適です。

このような仕様を満たすトランスをDigikeyの「SMSP(スイッチング電源用)トランス」のカテゴリの中から探すと絶望します。インダクタンスが小さかったり、電流を取り出せなかったり、条件にあうものが1つもありません。

インダクタンスが小さくてもリップルが大きくなるだけだと思うのですが、やはり冒険はしたくないもの。

・・・

このトランスの入手ができないので特注しかないかなーと半ば諦めていたのですが、なんと!Digikeyの「特殊トランス」というカテゴリの中でLT3439にぴったりのトランスを見つけました!

http://www.digikey.jp/product-search/ja?lang=ja&site=jp&KeyWords=78253%2F55MC&x=0&y=0

ありがとう村田製作所。78253シリーズという3.3V→5V昇圧あるいは5V→5Vのトランスがあるのです。しかも1個から変える!


(データシートより引用)

何やらMAX253用のトランスということで「特殊トランス」に分類されていたのですが、MAX253とLT3439は同じような機能のSW電源ICなのです。インダクタンスも数百uHあるし、きっと使えるはずです。

このトランスが本当に使えれば特注の必要はありません。もっともっとLT3439が使いやすくなるでしょう。この村田製作所のトランスを使ってLT3439の実験をすることにします。

Lownoise_smpw

来週早々には基板の出図をしようと思います。来週後半には結果が出るでしょう。

 

高精度ADC回路の設計

2013.11.10

高精度ADC回路の設計

 

特電Spartan-6ボードや、Artix-7ボードの拡張基板とするべく、ADCボードを設計しています。

ADCボードは、中速・高精度のものと、高速・中精度の2種類作る予定です。

中速高精度というのは2Mサンプルで18bi程度、高速中精度というのは200MHzサンプルで12bit程度を考えています。様々なセンサなどを使った計測には2Mサンプルで18bi程度で充分だし、放射線の計測には200MHzくらいのものがほしいということで、2種類作ることにします。

 

 

で、まずは18bitのものを作ろうとしているのですが、このクラスになると熱雑音とかアンプの雑音とかを真面目に考えなければならなくなります。

1kΩの抵抗の両端に生じる熱雑音は4nV/√Hzですから、1MHzの帯域を持たせるとなると音電圧は4μVになります。ADCを18bit精度として、ADCのフルスケールを3.3Vとすると、1LSBは12μVとなります。

もしプリアンプにゲインを持たせようと思って、抵抗で10kΩを使おうものならば熱雑音は約3倍になるわけなので、ADCの1LSBに匹敵する大きさになります。

このクラスのADCになると、アナログ入力端子が差動型になっています。シングルエンドで入ってきた信号を完全差動アンプを使って差動信号に変換します。

差動信号に変換するときに、もう1個の入力は通常は0Vにますが、ここに電圧を加えるとオフセットをキャンセルすることができます。

 

Lt6362

つまり、増幅と、オフセットのキャンセルが1個のアンプでできてしまうのが、完全差動アンプの魅力でもあります。

そして、完全差動アンプの出力には抵抗とコンデンサをつなぎます。このコンデンサが結構重要です。ADCはサンプリングするときに内部のコンデンサが電荷を引き抜くので、そのときに大量の電流を流す必要があるためです。その電流の元となる電荷をためておくためにコンデンサが必要です。

そして、次のサンプリングに備えて、このコンデンサにはすばやく電荷を補充しなければなりません。

低ノイズの完全作動アンプを探してみると、Linear TechnologyではLT6362(3.9nV/√Hz, 電源電圧±2.5Vまで、34MHzで-3dBダウン、消費電流1mA)なんていうのがあります。

Texas Instrumentsでは、THS4130(1.3nV/√Hz, 電源電圧±15Vまで、150MHzで-3dBダウン、消費電流16mA)が良い感じです。

LT6362とTHS4130のどちらが良いかは一概には決められないのですが、幸いなことにピン互換なので、両方作って試してみることにします。

 

それから、完全差動アンプに使う4個の抵抗も、値が正確にそろっていなければなりません。4個の抵抗の値のバランスが崩れると、コモンモードノイズがシングルエンドのノイズとして出てきてしまって、ノイズが増えます。

通常のディジタル回路のプルアップに使うような集合抵抗は、それぞれの抵抗の値のばらつきに規定はない(バラの抵抗を4個使うのと同じ?)ので、使えません。

このような用途に最適なのが、マッチングが保障された集合抵抗。たとえば、Linear TechnologyがLT5400というのを出しています。

http://www.digikey.jp/product-detail/ja/LT5400BCMS8E-4%23PBF/LT5400BCMS8E-4%23PBF-ND/

相対誤差が0.025%なので完全差動アンプの帰還抵抗に最適です。なんと1個800円もします。

まとめると、

  • 1kΩの抵抗からは4nV/√Hzの熱雑音が発生する。1MHz帯域の場合20bitADCの1LSBに匹敵する。このあたりが物理的限界。
  • ADCの入力に使うOPアンプも、そのくらいのノイズレベルのものを使うべし。
  • 完全差動OPアンプの帰還抵抗のマッチングは重要。精度のそろった抵抗は高い。

このような部品を使って、ADCボードを作って、今週中には動作試験をしたいと思っています。

 


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