特電Spartan-6ボードや、Artix-7ボードの拡張基板とするべく、ADCボードを設計しています。
ADCボードは、中速・高精度のものと、高速・中精度の2種類作る予定です。
中速高精度というのは2Mサンプルで18bi程度、高速中精度というのは200MHzサンプルで12bit程度を考えています。様々なセンサなどを使った計測には2Mサンプルで18bi程度で充分だし、放射線の計測には200MHzくらいのものがほしいということで、2種類作ることにします。
で、まずは18bitのものを作ろうとしているのですが、このクラスになると熱雑音とかアンプの雑音とかを真面目に考えなければならなくなります。
1kΩの抵抗の両端に生じる熱雑音は4nV/√Hzですから、1MHzの帯域を持たせるとなると音電圧は4μVになります。ADCを18bit精度として、ADCのフルスケールを3.3Vとすると、1LSBは12μVとなります。
もしプリアンプにゲインを持たせようと思って、抵抗で10kΩを使おうものならば熱雑音は約3倍になるわけなので、ADCの1LSBに匹敵する大きさになります。
このクラスのADCになると、アナログ入力端子が差動型になっています。シングルエンドで入ってきた信号を完全差動アンプを使って差動信号に変換します。
差動信号に変換するときに、もう1個の入力は通常は0Vにますが、ここに電圧を加えるとオフセットをキャンセルすることができます。
つまり、増幅と、オフセットのキャンセルが1個のアンプでできてしまうのが、完全差動アンプの魅力でもあります。
そして、完全差動アンプの出力には抵抗とコンデンサをつなぎます。このコンデンサが結構重要です。ADCはサンプリングするときに内部のコンデンサが電荷を引き抜くので、そのときに大量の電流を流す必要があるためです。その電流の元となる電荷をためておくためにコンデンサが必要です。
そして、次のサンプリングに備えて、このコンデンサにはすばやく電荷を補充しなければなりません。
低ノイズの完全作動アンプを探してみると、Linear TechnologyではLT6362(3.9nV/√Hz, 電源電圧±2.5Vまで、34MHzで-3dBダウン、消費電流1mA)なんていうのがあります。
Texas Instrumentsでは、THS4130(1.3nV/√Hz, 電源電圧±15Vまで、150MHzで-3dBダウン、消費電流16mA)が良い感じです。
LT6362とTHS4130のどちらが良いかは一概には決められないのですが、幸いなことにピン互換なので、両方作って試してみることにします。
それから、完全差動アンプに使う4個の抵抗も、値が正確にそろっていなければなりません。4個の抵抗の値のバランスが崩れると、コモンモードノイズがシングルエンドのノイズとして出てきてしまって、ノイズが増えます。
通常のディジタル回路のプルアップに使うような集合抵抗は、それぞれの抵抗の値のばらつきに規定はない(バラの抵抗を4個使うのと同じ?)ので、使えません。
このような用途に最適なのが、マッチングが保障された集合抵抗。たとえば、Linear TechnologyがLT5400というのを出しています。
http://www.digikey.jp/product-detail/ja/LT5400BCMS8E-4%23PBF/LT5400BCMS8E-4%23PBF-ND/
相対誤差が0.025%なので完全差動アンプの帰還抵抗に最適です。なんと1個800円もします。
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まとめると、
- 1kΩの抵抗からは4nV/√Hzの熱雑音が発生する。1MHz帯域の場合20bitADCの1LSBに匹敵する。このあたりが物理的限界。
- ADCの入力に使うOPアンプも、そのくらいのノイズレベルのものを使うべし。
- 完全差動OPアンプの帰還抵抗のマッチングは重要。精度のそろった抵抗は高い。
このような部品を使って、ADCボードを作って、今週中には動作試験をしたいと思っています。